黒い波が押し寄せる。それは、目の錯覚でもなんでもない。
黒くぬった一団が向かってくるのだ。黒オーマ。攻撃力最高、
単体での力は強いと噂されるオーマである。さすが、というべきか。

彼らは強かった。ただ、勇ましく攻撃を繰り出すその姿。
わずかな恐怖すら見えず、まるで戦いを心の底から楽しむような、
そんな印象をあたえる。しかし、彼らの攻撃を受ける我々にとって、
その勇ましさは惚れ惚れとする憧れを抱かせるとともに恐怖を
与えるのだ。圧倒的なまでの攻撃力に足がすくみ、気おされる。
そして、相手の一団が強力な攻撃を仕掛けようとするのを部隊長は見た。
これは、まともに喰らったら部隊全滅は避けられようもない。
部隊長は、部隊全員に指令を出した。

「防御するぞ!盾をもて!!地面に伏せろ!!」その腹の底から
絞り出された声に反応した部隊の兵士達は、全員防御体勢を取るため
に、いったんその場を離れる。足が硬直して、全身が次の攻撃を
予感して震えて、どうしようもない恐怖を抱くけれど。負けるわけには いかない。
そのためにも、死ぬわけにはいかない。守るべきもののためにも。
そして、戦いを乗り越えた先の平和のためにも。

だから、彼らは防御の体勢をとる。盾を構える。

この戦いを終えて、藩国に戻って、楽しい日々を送るのだ。
大好きな人たちに会うのだ。仲間や大事な人の顔を心にしっかりと
思い出す。魂に刻む。絶対に帰ってみせる。
黒のオーマの攻撃なんかに負けたくない、いや、負けない。
攻撃を防ぐだけじゃ足りない。勝つんだ。負けない。逃げない。
絶対にこの戦いに勝利を収めてみせる。歯を食いしばって、敵を見る。
黒の一群を、双眸に捕らえ、にらむ。お前達が誰であろうと、関係ない。
俺達は勝つんだ。勝って国に帰るんだ。

敵の攻撃が、放たれても。その攻撃に、心折れることなく
耐え切って見せる


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